相続人が同時に亡くなった場合の取り扱い
今回は、複数の相続人が災害や事故などで同時に亡くなった場合の相続の考え方について見ていきましょう。2023年6月に起こった潜水艦タイタンの事故も記憶に新しいですね。また、異常気象の影響でしょうか、洪水や台風などのニュースを目にする機会も増えた気がします。そういった災害などに家族で巻き込まれてしまった場合、相続はどうなるのでしょうか。
父・母・息子・父の両親という5人家族で考えてみましょう。例えば、父と息子が同じ事故に遭い、父は搬送中に死亡、息子は搬送後の病院で死亡したと仮定します。すると、どちらが先に死亡したかが明白であるため、本来の流れと同様に、順序通りに財産を相続します。
しかし、同じ事故に遭い、父と息子のどちらが先に死亡したかが不明の場合はどうなるのでしょうか。この場合、「同時死亡の推定」という民法の制度を適用し、父と息子の間では相続が発生せず、それぞれについて父や息子がいないものとして相続を考えます。つまり、父の財産は母に2/3、父の両親に1/3が相続され、息子の財産は母にすべてが相続されることになります。
ほんの少しの差であっても、どちらが先に死亡したかでその後の相続手続きが変わってきます。被相続人が死亡した時点で生存している者だけが相続人となる権利を有しているため、同時に複数の相続人が死亡した場合、その死亡時期の順序は相続に大きな影響を及ぼすということですね。
参考:納税通信 第3780号(2023年7月10日)5頁