いよいよ2023年10月スタート! インボイス制度がクリニックに与える影響について
今年10月よりいよいよインボイス制度がスタートします。
インボイス(適格請求書)を発行するためには、消費税課税事業者となり、事前に適格請求書発行事業者登録を完了させていなければなりません。保険診療収入には消費税が課税されないため、自院がインボイス発行事業者になるべきか否か迷われた院長も多いかと思います。
適格請求書発行事業者登録の期限が3月末から9月末までに延長されました。登録番号の発行には1か月半ほどかかっています。まだ迷っているという場合でも、事前準備を考えると、タイムリミットが目前まで迫っているといえます。インボイス制度の施行によって具体的にどのような影響があるのか改めて整理してみましょう。
≪インボイス制度が及ぼす影響≫
インボイス制度とは、消費税の仕入れ税額控除の方式です。消費税非課税とされる取引だけでなく、課税対象の取引でも、取引相手が一般の消費者の場合は、消費税の申告を行う必要がないため、インボイスの発行を依頼されることはありません。取引先の相手が企業や個人事業主などの事業者である場合は、インボイスの発行を求められることが予想されます。
例えば、下記のような収入は課税売上となるため、注意が必要です。
・健康診断
・予防接種
・委託報酬
・コンサルティング報酬 など
インボイスを貰えない場合、支払いをする企業側は仕入れ税額控除が受けられないため、支払う消費税額が増加します。そのため、企業がインボイスを発行してくれる医院に依頼先を変更する恐れがあります。
企業との取引が定期的にある場合は、主な売上先にインボイスの発行が必要か否か、事前に確認をしていただくようお勧めしています。
≪適格請求書発行事業者の義務≫
インボイスとは一定の要件を満たした請求書、「適格請求書」のことを指します。そのためインボイス発行事業者となった場合は、要件に沿った書式で請求書を発行できるよう、請求書システムを見直す必要があります。また、発行した請求書の保存義務、間違いがあった場合の「訂正インボイス」の発行保存義務、返金があった場合の「適格返還請求書」の発行保存義務も課せられています。事前の要件確認と、発行から保存までの手順をまだ決めてない場合は検討が必要です。
≪特例と経過措置について≫
本来免税事業者であったクリニックが、インボイス制度のため課税事業者になった場合には、事務負担と税負担を軽減する特例が設けられています。令和8年9月30日が属する課税期間までの期間が限られた、通称2割特例です。対象者は売上税額の2割を納税額とすることが認められています。適格請求書発行事業者登録しないと一度は決めたが、後日登録が必要となった、というケースも考えられます。状況に応じて随時ご検討ください。
また、仕入れ税額控除にも経過措置が設けられています。インボイスの受取がなくても、令和8年9月30日までは80%、令和11年9月30日までは50%の仕入れ税額控除が認められています。そのためその期間中に取引先からインボイスの発行を求められる場合も考えられます。取引先の状況に応じて、制度が開始してから適格請求書発行事業者登録をしてもらえないか相談されることもあるでしょう。弊社監査担当者にメリットとデメリットを確認し、ご判断ください。
このように制度施行後も、取引先の求めに応じて検討する必要性が出てきます。
また適格請求書発行事業者となった後も制度に向けての事前準備が必要となります。
直前で慌てることのないよう、早めの準備をお願いいたします。
文責 澤口由佳