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2022年5月13日

身近な著作権

1.はじめに

現在、私たちの日常生活ではパソコンやスマートフォン等の普及により、いつでも気軽に調べものができます。しかし、他者(著作者等)の知識(創作物等)の取り扱いを間違えると著作権侵害となり、刑事告訴により「10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処し、又は併科する」(著作権法119条1項)、損害額の立証負担を軽減する損害額推定等規定(著作権法114条)を適用して不法行為による損害賠償請求をすることができる(民法709条)等、大変な事態になる恐れもあります。

そこで、皆さんは、著作権にどのようなイメージがあるでしょうか。一般人でない特別な人だけが持っている権利でしょうか・・・。著作者等の権利を侵害せず、便利な情報を収集し、活用する上でも基礎的な著作権について確認して行きたいと思います。

なお、より詳細な著作権の内容を確認したい方は、文化庁著作権課「著作権テキスト~初めて学ぶ人のために~」[1](以下「テキスト」という。)及び「著作権法」[2]をご参照下さい。

 

2.著作権概要

⑴著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいいます(著作権法2条1項1号、10条)。下記に具体的な例示をします(テキスト8頁)。

 

①言語の著作物➡論文、レポート、小説、俳句等

②音楽の著作物➡楽曲、楽曲を伴う歌詞等

③美術の著作物➡絵画、マンガ等

④写真の著作物➡肖像写真、風景写真等

⑤プログラムの著作物➡コンピューター・プログラム

 

⑵著作者とは、著作物を創作する者をいいます(著作権法2条1項2号)。

一般的には、小説家や作曲家等の専門家をイメージしますが、作文やレポート等を創作した小学生や幼稚園児も著作者となり得ます。つまり、著作物が上手か否か等に関係なく、日常生活を送る中で誰もが著作者となっているのです(テキスト10頁)。

 

⑶著作権を端的に表現すると、著作者等が創作した著作物等に関する権利です(著作権法1条、2条以下参照)。また、下記のように区分できます。

①著作者の権利(狭義の著作権)

(イ)著作者人格権(著作権法18条~20条)

著作者の感情を守るもの(無断で公表されない権利等)で、譲渡・相続することができません(著作権法59条、テキスト12頁以下参照)。

(ロ)財産権としての著作権(著作権法21条~28条)

著作者の財産的利益を守るもの(無断で複製されない権利等)で、土地の所有権等と同様に、譲渡・相続することができます(著作権法61条、テキスト12頁以下参照)。

 

②著作隣接権(著作物等を伝達する者である実演家、レコード製作者、放送事業者〔著作権法2条1項4号、6号、9号〕等の権利、以下では実演家の権利を説明します。)

(イ)実演家人格権(著作権法90条の2、90条の3)

実演家の人格的利益を守るもの(実演家名を表示するか否かの権利等)。

(ロ)財産権(著作権法89条1項)

実演家の財産的利益を守るもの(無断で録音・録画されない権利等である許諾権と使用料を請求できる報酬請求権があります。テキスト31頁以下参照)。

 

3.著作権の取り扱い

  • 他人の著作物等を利用する方法

他人の「著作物」「実演」等を、「コピー」や「インターネット送信」等の方法で利用するためには、原則として権利者の許諾が必要です。当該許諾とは、利用の対価を支払う場合や無料の場合にかかわらず、権利者と利用者が契約することをいいます。

もっとも、多くの権利者と多くの利用者がそれぞれ相手を探し出して当該契約を行うのが困難であることから、多くの人々の権利を集中的に管理して契約窓口の一本化を行う団体が作られています。例えば、音楽に関しては、「一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)」が契約窓口となっており、当該窓口を利用して契約を行うことになります。(テキスト54頁、著作権等の利用に関する相談窓口一覧はテキスト62頁参照)。

 

  • 許諾なく利用できる場合

下記の場合には、許諾なく利用することができます。

 

  • 保護対象となる著作物等でない場合(著作権法13条各号)

(イ)憲法その他の法令

(ロ)国、地方公共団体の機関等が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの

(ハ)裁判所の判決等

(ニ)上記の翻訳物及び編集物で、国、地方公共団体の機関等が作成するもの

 

  • 著作権・著作隣接権の保護期間が切れている場合
    • 著作人格権又は実演家人格権の保護期間は、著作者等が生存している期間(著作権法59条又は101条の2類推適用)。
    • 著作権(財産権)の保護期間は、原則として著作者の生存期間+死後70年間(著作権法51条、テキスト21頁参照)。
    • 著作隣接権(財産権)の保護期間は、原則として実演家の生存期間+死後70年間(著作権法101条、テキスト40頁参照)。

 

  • 「権利制限規定」による例外の場合(テキスト64頁以下参照)

(イ)私的使用のための複製(著作権法30条参照)

テレビ番組を録画しておいて後日、自分で見る場合等のように家庭内等限られた範囲内で仕事以外の目的に使用することを目的として、使用する本人が複製する場合が該当します。

 

(ロ)学校その他の教育機関における複製等(著作権法35条参照)

学校・公民館等で教師等や児童生徒等が教材作成等を行うために、複製、公衆送信(自動公衆送信の場合にあっては、送信可能化を含む。)及び公衆送信されるもので受信装置を用いて公に伝達する場合が該当します。

 

(ハ)図書館等における複製等(著作権法31条参照)

公立図書館や美術館、博物館等で複製する場合が該当します。

 

(ニ)視覚障害者等のための複製等(著作権法37条参照)

著作物を点字に訳して複製する場合が該当します。

 

(ホ)引用(著作権法32条参照)

他人の主張や資料等を引用する場合が該当します。

(下記は、引用して利用することができる条件です)

・すでに公表されている著作物であること

・公正な慣行に合致すること(例えば、引用を行う必然性があることや、言語の著作物についてはカギ括弧等により「引用部分」が明確になっていること。)

・報道、批判、研究等の引用の目的上、正当な範囲内であること(例えば、引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であることや、引用される分量が必要最小限度の範囲内であること)

・出所の明示(著作権法48条)が必要(複製以外は、その慣行があるとき)

 

(ヘ)上記のほか、報道、立法、司法、行政、非営利・無料、転載、美術品・写真・建築、デジタル化・ネットワーク化関係等が該当する場合があります。

 

4.おわりに

著作権ついて調べてみると、著作権は職業専門家等が有する特別な権利だけでなく、一般的な私たちの日常生活からも発生する身近な権利でもあることが理解できました。

また、著作権の種類も言語、音楽、美術等、多種多様で私たちの生活文化を豊かにするものが沢山あり、著作物等の果たす役割の重要性や著作者等の権利を適切に保護し、著作者等の創作意欲を維持向上させることで著作物等の品質が高まり、私たちの生活文化の豊かさを高めることにつながると考えることができました。

そして、今回の内容が皆さんにとって、著作物等の公正な利用のためには著作物等の適切な取り扱いが必要である点の意識が高まり、これにより著作者等の権利の保護が図られ、著作物等の品質等がさらに向上することにより、皆さんの文化発展に寄与できるとすれば幸甚です。

[1]文化庁著作権課「著作権テキスト~初めて学ぶ人のために~」(令和3年度) [https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/pdf/93293301_01.pdf]最終閲覧日2022年4月27日。

[2] 著作権法[https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000048]最終閲覧日2022年4月28日。

 

文責:伊東 和夫

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