のぞみだより#24「相続税の調査等について」
12月に国税庁から令和2事業年度における相続税の調査等の状況が発表されました。
【実地調査】
相続税の実地調査は、新型コロナウイルス感染症の影響により実地調査件数は大幅に減少(前事務年度比48%)しました。しかし、大口・悪質な不正が見込まれる事案を優先して調査した結果、実地調査1件当たりの申告漏れ課税価格は3,496万円、追徴税額は943万円となり過去10年間で最高となったということです。
1件当たりの申告漏れ課税価格も追徴税額も昨年度より増加しています。一方で、重加算税の賦課件数、賦課割合は減少しています。
コロナ禍のなかで、調査が効率的に行われたということだと思われます。
実地調査とは、亡くなられた方や相続人の自宅等で行われる調査となります。実地調査を経験される方は、そう多くはないと思います。税務調査官が複数人で臨場し、故人の財産の使途の詳細や蓄積の方法、財産の異動などを尋ねられます。通常一部屋に机をはさんで、調査官と相続人が向かい合って行われます。相続人でも亡くなられた方のすべてを知っているわけではありません。質問に答えられないこともあります。かなりの緊張感です。できれば経験したくはありません。
相続人の知らない財産が見つかったり、また、つい税理士に言わなかった財産があったりという場合もあります。その場合は申告しなおすことになります。
【簡易な接触】
簡易な接触とは文書や電話による連絡または、税務署における面接により申告漏れ、計算誤り等がある申告を是正する手法です。
令和2年度は新型コロナウイルス感染症の影響があり実地調査が減少した半面、この簡易な接触が増加しました。簡易な接触件数は13,364件(前事務年度比157.9%)、申告漏れ等の非違件数は、3133件(同137.3%)申告漏れ課税価格は560憶円(同131.1%)、追徴税額は65億円(同154.8%)と、簡易な接触の事績を集計しはじめた平成28事務年度以降で最高となったということです。1件当たりの申告漏れ課税価格は410万円で、追徴税額は47万円となっています。
また、申告義務があるのに申告しない【無申告】事案について、実地調査件数は減っても1件当たりの追徴税額は1328万円(前事業年度比148.2%)と増加し、無申告事案に対する実地調査1件当たりの追徴税額の集計を始めた平成21事業年度以降で最高となったということです。
コロナ禍でも調査は実施されています。申告納税制度の下で、自発的に適正な申告、納税を行いましょう。そのためのお手伝いをさせていただきます。
税理士法人のぞみ 松本事務所所長 税理士 百瀬幸子