消費税の仕入税額控除~適格請求書発行事業者の登録申請~
消費税の『仕入税額控除』をご存知でしょうか?
消費税の納税額は、課税売上に係る消費税額から課税仕入に係る消費税額を控除して納付すべき消費税額を計算する仕組みになっており、この、課税仕入に係る消費税額を控除することを仕入税額控除と言います。例えば、税込11,000円で仕入れた商品を税込22,000円で販売した場合、納付すべき消費税額はいくらでしょうか?答えは、
2,000円-1,000円=1,000円
ですよね。
上記算式の『-1,000円』が仕入税額控除です。
実はこの仕入税額控除、支払ったものの消費税なら何でもかんでも控除できるわけではありません。仕入税額控除の対象になるものが消費税法で細かく規定されており、要件を満たしたものだけが仕入税額控除の対象となります。今回はこの仕入税額控除の要件のうち、請求書等の保存と記載事項について簡単に確認したいと思います。
仕入税額控除の要件となる請求書等(以下、「区分記載請求書等」といいます。)への記載事項は現行以下の通りです。
① 請求書発行者の氏名又は名称
② 取引年月日
③ 取引の内容
④ 税率ごとに区分して合計した対価の額(税込)
⑤ 軽減税率の対象品目である旨
⑥ 請求書受領者の氏名又は名称
2019年10月に消費税率が8%から10%へ引き上げられ、同時に軽減税率制度が実施されました。軽減税率制度の実施により、買い物をした際のレシートなどには『10%対象○○円』『8%対象○○円』『※印は軽減税率(8%)対象商品』などと記載されるようになったことは上記④と⑤に対応するためです。上記記載事項が記載された請求書等の保存があって初めて仕入税額控除の要件を満たすことになります。会計事務所の担当者に、「クレジットカードの利用は必ずレシート原本を保管してください!」と言われたことがある方もいらっしゃるかと思いますが、レシートが必要な理由は仕入税額控除のためなのです。
消費税は令和5年(2023年)10月から適格請求書等保存方式(インボイス制度)が導入されます。インボイス制度では区分記載請求書等に代え適格請求書等(インボイス)の保存が仕入税額控除を行うための要件となります。
インボイスは現行の区分記載請求書等にいくつかの記載事項が追加されるため、新たに書類を作成しなければならないというわけではありません。では、適格請求書等(インボイス)では区分記載請求書等に何を追加すればいいのか?
それは
①登録番号
②適用税率
③消費税額
の3点。
適格請求書等は適格請求書発行事業者でなければ交付できないため、適格請求書発行事業者の登録をして、①の登録番号の通知を受ける必要があります。適格請求書発行事業者となるためには所轄の税務署長に「適格請求書発行事業者の登録申請書」(以下、「登録申請書」といいます。)を提出し、登録を受ける必要があります。登録申請書は、令和3年10月1日から提出可能ですが、インボイス制度が導入される令和5年10月1日から登録を受けるには原則として、令和5年3月31日までに登録申請書を提出する必要があるため注意が必要です。他の注意点として、適格請求書発行事業者の登録は課税事業者でなければ受けることはできません。免税事業者の方が適格請求書発行事業者の登録を受けるには課税事業者にならなければなりません。また、基準期間の課税売上高が1,000万円以下となった場合でも適格請求書発行事業者の登録を受けた場合は免税事業者になりません。
今回は仕入税額控除の請求書等の保存と記載事項、そしてインボイス制度について簡単に確認しました。今後のインボイス制度について少しまとめると、
①適格請求書等の保存がなければ仕入税額控除が適用できない。
②免税事業者は適格請求書発行事業者になれない。
③適格請求書発行事業者となるためには税務署長に登録申請書を提出し登録を受ける必要がある。
④登録申請書は令和3年10月1日から提出可能。また、令和5年10月1日から登録を受ける場合は令和5年3月31日までに登録申請書を提出する。
⑤適格請求書発行事業者は基準期間の課税売上高が1,000万円以下となっても免税事業者にならない。
また、免税事業者からの仕入れは原則、仕入税額控除の対象外ですが、令和5年10月1日から6年間は経過措置として一定割合のみ仕入税額控除の対象となります。インボイス制度についてこれから準備を進めるという方がほとんどではないかと思います。制度の導入までまだ時間はありますが早めに必要な準備を進めることが大切です。
文責:上條 洋輔